令和6年度の試験問題の見直しによって、1級土木施工管理技士の第二次検定の経験記述は、これまでのように「例文を1本用意して覚えていく」対策が通用しなくなりました。
指定されるテーマが2つになり、同じ工事について異なる切り口で書き分ける力が問われるようになったためです。
そこでこの記事では、例文は掲載しません。
代わりに、どのテーマが指定されても組み立てられる「型」と、自分が携わった工事から材料を引き出す手順を整理します。
暗記ではなく、本番で組み立てられる状態をつくることが目的です。
目次
- 1級土木施工管理技士の経験記述は令和6年度から何が変わったのか
- 指定テーマが1つから2つに増えた
- 経験記述は事実上の足切り問題
- 合格する経験記述を支える5つの要素
- ①工事概要:数値は記録で確認できるものだけ
- ②技術的課題:現場固有の条件から書き始める
- ③検討項目:選ばなかった案にも触れる
- ④対応処置:実施した内容を具体的に
- ⑤評価:結果と、次に生かす視点
- 1つの工事から2つのテーマを書き分ける手順
- 完成した文章から作らない
- まず「工事の事実台帳」をつくる
- 指定テーマに合わせて型へ流し込む
- 不合格になりやすい経験記述の3パターン
- ①例文をそのまま覚えている
- ②課題と対応処置がつながっていない
- ③具体性を出すために数値を作る
- 書き上げたあとに必ずやるべきこと
- まとめ:経験記述は暗記ではなく、自分の経験の洗い出しが重要!
1級土木施工管理技士の経験記述は令和6年度から何が変わったのか
対策を始める前に、まず現在の出題形式を正しく把握しておく必要があります。
数年前の情報をもとにした対策法が今もインターネット上に多く残っており、それをそのまま実行すると本番で対応できないおそれがあるためです。
ここでは、令和6年度の見直しで何が変わり、何が変わっていないのかを整理します。
指定テーマが1つから2つに増えた
令和5年度までの経験記述は、工事概要に加えて、品質管理や安全管理といった1つのテーマについて技術的課題と対応を記述する形式でした。
この形式は長く続いていたため、テーマごとに完成した文章を用意し、当日はそれを書き写すという対策が成立していました。
令和6年度以降は、設問1と設問2で異なるテーマが指定され、その両方に解答する形式に変わっています。
令和7年度に指定されたのは「品質管理」と「環境対策」で、環境対策は近年出題されていなかったテーマでした。
この変更の意味は明確です。
1テーマ分の完成文を暗記していても、指定が外れた時点で書けなくなります。
準備すべきものが「文章」から「自分の工事についての引き出し」へ移ったと考えてください。
経験記述は事実上の足切り問題
経験記述の配点の内訳は公表されていません。
「経験記述の配点は全体の何割」といった説明を見かけることがありますが、これは推測にすぎないため、学習の優先順位を決める根拠にはしないほうが安全です。
一方で確実な事実として、問題1(経験記述)が無記載の場合には問題2以降が採点されないと案内されています。
つまり、他の記述問題でどれだけ得点しても、経験記述が空欄であれば挽回できない構造になっています。
配点を推測するより、この一点を押さえておくほうが実務的です。
| 項目 | 令和5年度まで | 令和6年度以降 |
|---|---|---|
| 指定テーマ数 | 1つ | 2つ(設問1・設問2) |
| 工事概要 | 記述が必要 | 記述が必要(2つの設問に共通) |
| 有効な準備 | 完成文の暗記でも対応しやすい | 工事の事実を整理し、テーマに応じて組み替える |
| 想定すべきテーマ | 品質管理・安全管理が中心 | 施工計画・工程管理・環境対策まで広く想定 |
合格する経験記述を支える5つの要素
形式は変わりましたが、評価される文章の構造そのものは変わっていません。
「工事概要 → 技術的課題 → 検討項目 → 対応処置 → 評価」の5要素が、因果関係を保ったままつながっているかどうかが評価の分かれ目です。
要素ごとに書くべき内容を確認していきます。
①工事概要:数値は記録で確認できるものだけ
工事名、発注者名、工事場所、工期、主な工種、施工量、そして自分の立場を記載します。
土木工事に該当しない工事(建築工事や造園工事など)は題材にできません。
また、自分が管理者として関わった工事であることが前提です。
工事名:__/発注者:__/工事場所:__
工期:__年_月~__年_月/主な工種:__/施工量:__
本工事における立場:__
②技術的課題:現場固有の条件から書き始める
ここで最も多い失敗が、一般論から入ってしまうことです。
「品質管理は重要である」といった書き出しでは、どの現場にも当てはまる文章になり、経験を問う設問の答えになりません。
「この現場にはこういう条件があった」という固有の状況から始めてください。
本工事は【現場の条件・制約】であったため、【何が】【どうなる】おそれがあった。そこで【何を確保すること】が技術的課題となった。
③検討項目:選ばなかった案にも触れる
課題に対して何を比較検討したのかを示します。
選択肢を複数挙げ、その中からなぜその方法を選んだのかまで書くと、判断した人間の文章になります。
ひとつの対策をいきなり提示するより説得力が出ます。
課題の解決にあたり、①__ ②__ ③__ を検討した。このうち【現場条件】を踏まえ、__が適切と判断した。
④対応処置:実施した内容を具体的に
実際に何をしたのかを、管理値・頻度・体制といった具体で書きます。
ここが抽象的だと、検討したが実行していない印象になります。
ただし、書けるのは記録で確認できる数値だけです。
①__を実施した。②__を__の頻度で測定・確認した。③__の体制を整え、__を周知した。
⑤評価:結果と、次に生かす視点
対応処置によって課題が解決したことを示します。
「無事に完了した」で終わらせず、確保できた品質や工程を結果として書き、今後の留意点まで添えると締まります。
その結果、__を確保し、__することができた。今後も同種の工事では__に留意して施工管理にあたりたい。
1つの工事から2つのテーマを書き分ける手順
5つの型を理解しても、当日に何が指定されるかは分かりません。
新形式で問われているのは、指定されたテーマに合わせて自分の経験を取り出せるかどうかです。
ここからは、暗記に頼らずに本番で組み立てるための準備手順を、3つのステップで解説します。
完成した文章から作らない
2テーマ形式では、共通の工事概要のもとで異なるテーマに解答することになります。
安全管理の完成文だけを用意していた場合、品質管理と環境対策が指定された時点で対応できません。
準備の順序を、文章づくりから事実の洗い出しへ切り替えてください。
まず「工事の事実台帳」をつくる
題材にする工事を1つ決めたら、その現場で起きたことを次の観点で書き出します。
文章にする必要はなく、箇条書きのメモで構いません。
| 洗い出す観点 | 書き出す内容の例 |
|---|---|
| 現場条件 | 地質、地下水、近接構造物、交通量、空間の制約 |
| 工程上の制約 | 工期の逼迫、天候による中断、他工事との調整 |
| 品質上の懸念 | 材料の温度管理、締固め、出来形の精度 |
| 安全上のリスク | 重機と作業員の接触、高所作業、埋設物 |
| 周辺環境への影響 | 騒音・振動、濁水、粉じん、建設副産物 |
| 実施した措置と結果 | 管理値、測定頻度、体制、確保できた品質や工程 |
指定テーマに合わせて型へ流し込む
台帳ができていれば、本番でやることは、指定されたテーマに合う行を選び、5つの型に流し込む作業だけになります。
準備段階では、選んだ工事で品質管理・安全管理・工程管理・環境対策のうち3つ以上を書けるかを確認しておくと安心です。
書けないテーマがある場合は、別の工事を題材にすることも検討してください。
▶この記事では経験記述の書き方を整理していますが、ここで洗い出した工事の経歴は、そのまま転職市場での評価材料にもなります。
「自分の経験が業界内でどう評価されるのか知りたい」という方は、転職支援サービスで相談してみるのも一つの方法です。
不合格になりやすい経験記述の3パターン
経験記述で評価が伸びない答案には、共通する傾向があります。
いずれも現場経験の不足が原因ではなく、書き方の問題であることがほとんどです。
裏を返せば、事前に知っておくだけで避けられます。
自分の答案が当てはまっていないか確認してください。
①例文をそのまま覚えている
市販の例文や他人の記述をほぼそのまま持ち込むと、設問の切り口が変わった瞬間に書けなくなります。
加えて、経験記述は自分が実際に携わった工事について書くことが前提であり、事実と異なる内容を記述することは避けなければなりません。
例文は構造を確認するために読むもので、覚えるものではないと考えてください。
②課題と対応処置がつながっていない
課題では地下水の湧水を挙げているのに、対応処置では品質管理の話になっている、といったずれです。
書き上げたら、課題の一文と対応処置の一文だけを並べて読み、原因と対策の関係が成立しているかを確認してください。
③具体性を出すために数値を作る
具体的に書こうとするあまり、記憶があいまいな数値を埋めてしまうケースです。
誤った数値は具体性ではなく、記述全体の整合性を崩す原因になります。
確認できない場合は、数値ではなく管理の方法や体制で具体性を出してください。
書き上げたあとに必ずやるべきこと
経験記述の難しさは、自分の文章が合格水準に達しているかを自分では判断できない点にあります。
知識問題であれば正誤が分かりますが、記述は読み手の評価によるためです。
そこで、必ず第三者に読んでもらってください。
専門の添削サービスを使う方法もありますが、まずは職場の上司や先輩でも十分です。
依頼するときは細かい添削を求めず、「課題から対応処置、結果までを迷わず追えたか」だけを確認してもらうと効果的です。
読み手が途中で引っかかる箇所が、そのまま採点者が引っかかる箇所になります。
まとめ:経験記述は暗記ではなく、自分の経験の洗い出しが重要!
令和6年度以降の経験記述は、テーマが2つ指定される形式となり、完成文の暗記では対応できなくなりました。
準備すべきなのは文章ではなく、自分が携わった工事の事実です。
台帳として現場条件・課題・実施した措置を洗い出しておけば、どのテーマが来ても5つの型に沿って組み立てられます。
そして、書き上げたあとは必ず第三者の目を入れること。
この2点が、経験記述で失点しないための現実的な対策です。
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