「施工管理を長年続けてきたが、転職すると勤続年数がリセットされて給料が下がってしまうのでは……」。
そんな不安を抱えていませんか?
確かに、一般的な年功序列の企業では、在籍期間のリセットは給与低下を招きがちです。しかし、公共工事の上流にあたる発注者支援業務(公共工事の発注者をサポートする仕事)への転職においては、その常識は全く当てはまりません。
この記事では、厚生労働省の最新の統計データを基に、転職による勤続年数のリセットがあなたの「年収」や「今後のキャリア」に与える実際の影響を徹底検証します。
目次
- 発注者支援へ転職すると「勤続年数」はどうなる?
- 「会社での勤続年数」と「業界経験年数」の決定的な違い
- 「施工管理10年」でも転職先では「勤続1年目」という現実
- だからといって給与まで新卒扱いになるわけではない
- 建設業の給与は勤続年数でどれくらい変わる?
- 経験年数(勤続年数)に応じた賃金データ一覧
- 基本給だけでなく「賞与(ボーナス)」にみる大きな格差
- 「長く勤めれば必ず得」とも限らない決定的な理由
- 転職した人の給料は実際に上がっているのか?
- 年代別・転職に伴う賃金変動の実態
- 年代によって「増加」と「減少」の傾向が全く異なる理由とは?
- 施工管理→発注者支援で考えるべきポイント
- 勤続年数より評価されやすい「持ち運べる経験」とは
- 「1級土木施工管理技士」などの強力な国家資格
- 工事監督、工程・品質・安全管理の実務経験
- 発注者との協議・書類作成(設計変更等)の経験
- 転職前に必ず確認したい「経験年数の給与換算ルール」
- まとめ|見るべきは勤続年数より「経験の評価方法」
発注者支援へ転職すると「勤続年数」はどうなる?
発注者支援業務と施工管理の役割や仕事内容の根本的な違いに関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。
「会社での勤続年数」と「業界経験年数」の決定的な違い
転職をためらう技術者の多くが、2つの「年数」を混同しています。
社内勤続年数
特定の企業に籍を置いた期間。退職金や年功序列型の昇給基準として用いられます。
業界経験年数
施工管理や工事監督など、専門業務に携わってきた「実質的なキャリアの長さ」を指します。
発注者支援業務の転職において、社内勤続年数は「1年目」に戻ります。しかし、業界経験年数はリセットされず、あなたの市場価値を決定づける最も重要な評価指標として、そのまま引き継がれます。
「施工管理10年」でも転職先では「勤続1年目」という現実
ゼネコン(総合建設業者)等で10年間、施工管理として従事してきた技術者が転職した場合、雇用契約上のステータスは「勤続1年目」となります。
これが異業種への転職であれば、この「勤続1年目」という事実が給与の引き下げ要因となります。新しい職場における仕事の進め方や貢献度が未知数であるため、新卒に近い処遇からスタートせざるを得ないからです。
だからといって給与まで新卒扱いになるわけではない
しかし、発注者支援業務への転職では、施工管理での実績は「即戦力」として100%評価されます。
したがって、契約上は「勤続1年目」でありながらも、実際の給与テーブルでは「実務経験10年・有資格者」としての等級が最初から適用されるのが一般的です。
発注者支援を請け負う建設コンサルタントは、国や自治体などの「発注者」を支援する技術的なパートナーです。そのため、1級土木施工管理技士などの国家資格が不可欠となります。
施工管理経験者は「明日からすぐに現場を任せられる存在」です。給料が新卒レベルに下がることはなく、むしろ「前職の基本給+技術手当+経験加算」により、前職と同等、あるいはそれ以上の待遇で迎え入れられるケースが非常に多いのです。
建設業の給与は勤続年数でどれくらい変わる?
経験年数(勤続年数)に応じた賃金データ一覧
建設技術職に深く関わる3職種の経験年数別の給与データは以下の通りです。
経験年数階級別・月間所定内給与および年間賞与額の推移
| 職種・区分 | 0年 | 1〜4年 | 5〜9年 | 10〜14年 | 15年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① 専門的・技術的職業従事者 | |||||
| 月給 千円 | 329.4 | 346.6 | 370.0 | 421.0 | 491.0 |
| 賞与 千円 | 302.3 | 1,054.9 | 1,291.0 | 1,452.9 | 1,800.8 |
| 推定年収 万円 | 425.5 | 521.4 | 573.1 | 650.5 | 769.3 |
| ② 建設・採掘従事者 | |||||
| 月給 千円 | 240.1 | 269.3 | 314.6 | 344.2 | 372.7 |
| 賞与 千円 | 108.3 | 485.6 | 733.7 | 851.0 | 983.7 |
| 推定年収 万円 | 298.9 | 371.7 | 450.9 | 498.1 | 545.6 |
| ③ 管理的職業従事者 | |||||
| 月給 千円 | 623.6 | 600.3 | 595.5 | 576.7 | 599.2 |
| 賞与 千円 | 2,824.0 | 2,554.5 | 2,381.2 | 2,265.3 | 2,574.5 |
| 推定年収 万円 | 1,030.7 | 975.8 | 952.7 | 918.6 | 976.5 |
※厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」を基に算出。推定年収=月給×12+賞与
基本給だけでなく「賞与(ボーナス)」にみる大きな格差
データを見ると、「①専門的・技術的職業従事者」「②建設・採掘従事者」は経験年数が長くなるにつれて基本給だけでなくボーナスも大きく伸びています。
特に「専門的・技術的職業従事者」の場合、経験0年目の賞与は30.2万円ですが、15年以上では180.0万円に到達します。推定年収も経験0年目の425.5万円から15年以上の769.2万円と、約1.8倍に広がります。この伸び幅を見ると「同じ会社に留まるのが最も得だ」と考えがちですが、ここに建設業界特有の盲点が存在するのです。
発注者支援業務の年収相場や、経験年数・保有資格ごとの具体的な給与レンジに関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。
「長く勤めれば必ず得」とも限らない決定的な理由
統計データを詳細に読み解くと、「同じ会社に長く勤めること」が必ずしも生涯年収の最大化をもたらさない理由が3つあります。
中途採用では「0年目」でも高待遇になり得る
「管理的職業従事者」では、経験0年目の推定年収が1,030.7万円と最も高くなっています。
資格や経験を持って転職してきたベテラン人材は、勤続年数が短くても、そのスキルを評価されて高い待遇で採用されるケースがあることを示しています。
ゼネコン・サブコンでは年収が「頭打ち」になる場合がある
「建設・採掘従事者」の推定年収は、10〜14年目の498.1万円から、15年以上の545.6万円へと上昇しますが、月給の伸びは約2.8万円程度に留まります。
発注者支援業務は「技術者単価」が給与設計に影響する
発注者支援業務を行う会社では、公共事業で用いられる設計業務等技術者単価が人件費や給与設計の重要な基準のひとつになります。
この技術者単価は2013年度から14年連続で上昇し、2026年度も全職種単純平均で前年比4.3%増となっています。
転職した人の給料は実際に上がっているのか?
年代別・転職に伴う賃金変動の実態
中途採用で新しい会社に入社した際、前職の賃金と比較して「1割以上増加した人」「1割未満の増減(横ばい)だった人」「1割以上減少した人」の割合は以下の表の通りです。
転職入職者の年齢階級別・賃金変動区分比率(令和6年)
| 年齢階級 | 1割以上増加 | 1割未満増減 (横ばい) |
1割以上減少 | 傾向分析・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 全体(計) | 29.4% | 48.9% | 21.7% | 増加が約3割で、減少の約2割を上回っています。全体として、転職による賃金アップを実現した人の割合が比較的高い状況です。 |
| 20〜29歳 | 38.2% | 46.8% | 15.0% | 1割以上の増加が約4割に達し、減少は15.0%。若手ほど転職による賃金アップが目立つ結果となっています。 |
| 30〜44歳 | 34.9% | 45.9% | 19.2% | 増加が約3.5割で減少を大きく上回ります。即戦力としての経験やスキルを評価されやすい年代です。 |
| 45〜59歳 | 25.0% | 51.1% | 23.9% | 増加25.0%が減少23.9%をわずかに上回っています。ベテラン層でも実績や資格次第で賃金アップが可能と読み取れます。 |
| 60歳以上 | 13.5% | 42.2% | 44.3% | 減少が44.3%と最も多いものの、以前の統計に比べると改善。増加割合も13.5%まで高まっています。 |
※厚生労働省「雇用動向調査」より、2024年(令和6年)の転職入職者における賃金変動状況を抽出。小数点第2位以下四捨五入。
年代によって「増加」と「減少」の傾向が全く異なる理由とは?
統計データを詳細に分析すると、転職による賃金の損得は、「どの年代で転職に踏み切るか」によってその様相が全く異なることが浮き彫りになります。
20代〜40代前半
若手〜中堅は「賃金アップ」が圧倒的に優勢
若手〜中堅層では、転職によって月給が1割以上増えた人が、減少した人を大きく上回っています。
勤続年数による年功的なメリットを失う影響が比較的小さく、施工管理の実務経験や施工管理技士などの資格が転職市場で評価されやすいためです。
45〜59歳
ベテラン層でも「増加」が「減少」を逆転
以前は賃金減少の割合が高かった45〜59歳でも、最新データでは増加が減少を上回っています。
建設業界の人手不足を背景に、豊富な実務経験や現場所長などのマネジメント経験を持つ人材の評価が高まっていることが考えられます。
60歳以上
シニア層でも賃金低下の割合が改善
60歳以上では依然として賃金が減少する人が多いものの、以前と比べると減少割合は約10ポイント縮小しています。
一方で、1割以上賃金が増加した人も13.5%まで増えており、シニア人材の処遇にも改善が見られます。
施工管理→発注者支援で考えるべきポイント
上記の年代別の傾向を踏まえ、施工管理から発注者支援業務へキャリアチェンジをする際には、自身の年代に合わせて損得をシミュレーションする必要があります。
特に、若手施工管理技術者にとって、転職は「将来の年収の大幅な伸び代」を確保するチャンスです。現場では、年功序列の壁によって給与が十分に反映されない不満が募りやすいものです。高齢化が進む発注者支援業界では、現場経験のある若手技術者を強く求めており、早い段階から上流工程としてのキャリアを構築できます。
30代の施工管理技術者が5年後・10年後の働き方を見据え、発注者支援業務へステップアップするキャリア戦略に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。
また、ベテラン・シニア(40代後半〜60代以上)は、一般の統計データでは「45歳以上は年収が下がりやすい」とされていますが、「施工管理から発注者支援」という特化型の転職においては、この一般論を覆すことができます。
なぜなら、工事監督支援業務などで最も求められるのは、まさにベテラン技術者が持っている「現場を乗り越えてきた施工実績と解決能力」だからです。現場を熟知した1級土木施工管理技士を持つベテラン現場監督は、転職市場でトップクラスの価値を持ちます。
転職による勤続年数はリセットされますが、企業側は前職での高い給与水準を考慮し、それを上回る年収を提示してでも確保したいと考えるのです。
勤続年数より評価されやすい「持ち運べる経験」とは
施工管理技術者がこれまでに現場で培ってきたキャリアのなかで、特に評価され、高待遇を引き出すためのキーとなるスキルや資格を解説します。
「1級土木施工管理技士」などの強力な国家資格
転職時における最大の武器は、保有している「国家資格」です。発注者支援業務においては、以下の資格が特に重要視されます。
- 1級土木施工管理技士/1級建築施工管理技士など
- 技術士(建設部門、総合技術監理部門等)
- RCCM(シビルコンサルティングマネージャ)
これらの資格が勤続年数以上の効力を持つ理由は、発注者である国や自治体が公共事業を発注する際、総合評価落札方式などにおいて「保有資格」を入札参加要件や加点対象(評価項目)として厳格に規定しているためです。
有資格者を採用することは、企業にとって「自社が受注できる公共案件の幅が直接広がる」ことを意味します。そのため、入社時点での勤続年数よりも、入札に即座に貢献できる有資格者としての市場価値がはるかに優先され、基本給や資格手当の算定において反映されるのです。
工事監督、工程・品質・安全管理の実務経験
施工管理として日々行っている「現場管理業務」そのものが、発注者支援業務にとって最高の即戦力キャリアとなります。主要なメニューである工事監督支援業務では、施工会社が提出してくる施工計画書のチェック、現場での出来形の確認、品質や安全管理状況の現場立ち会いを行います。
施工計画書の審査能力
最適な施工手順や工法を判断するには、自ら施工計画を作成してきた実務経験が重要です。
品質・安全管理のチェック
災害リスクや施工不良が起こりやすいポイントを見抜くには、現場監督として施工管理を経験してきた知識が活かされます。
発注者との協議・書類作成(設計変更等)の経験
施工管理業務の中で、発注者との協議を重ねて合意形成を図ってきた経験、数量計算書や設計変更に伴う根拠資料を作成してきた経験は極めて高く評価されます。
公共工事では、予期せぬ障害物の発生等に対し、設計変更を行うことがルールに基づいて行われます。発注者支援会社では、発注者の担当職員に代わって「設計変更の根拠書類」を審査し、適切な設計変更手続きを支援します。
- 設計変更手続きに強い(数量算出や内訳書構成がわかる)
- 官公庁向けの書類様式(決裁・起案書類等)の作成作法に慣れている
- 論理的な協議交渉や説明責任の遂行が得意である
これらは上流工程を担う発注者支援業務において、高待遇を勝ち取る材料になります。
転職前に必ず確認したい「経験年数の給与換算ルール」
施工管理から発注者支援業務へ転職する際、求職者が最も注意深く確認し、交渉すべきなのが「前職での実務経験年数の給与換算ルール(経験年数の適用比率)」です。
前職の実務経験年数は、転職先でどの程度「経験年数」として認められる?
前職の経験をそのまま評価する「等価換算」
前職での10年間をそのまま10年分として認め、生え抜きの10年目社員に近い給与テーブルを適用する非常に有利なルールです。
前職経験に一定の「掛け目」を入れる調整換算
前職の経験年数を70〜80%程度に換算し、自社の給与テーブルへ当てはめる方法です。100%換算より初任給は低くなる可能性があります。
面接や内定の段階で、「自分の実務経験が何年分として換算されるか」「1級土木施工管理技士の資格手当はいくらか」「残業時間は月平均何時間か」の3点を必ず確認しましょう。これらを事前に明確にすることが、転職を「得」に変える方程式です。
施工管理から発注者支援業務へ転職する際の、具体的な給与決定メカニズムや年収アップを成功させる交渉術に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。
まとめ|見るべきは勤続年数より「経験の評価方法」
これまでの要点を振り返ってみましょう。
- 勤続年数と実務経験は別物:会社での勤続年数は1年目にリセットされますが、これまでの「実務経験」はリセットされず、新しい会社の給与を決定するパラメーターとして引き継がれます。
- 会社に居続ける年収の限界:令和7年賃金構造基本統計調査では、同じ会社に長く勤めることによる賃金上昇は一定の年齢で頭打ちになります。一方で、資格や経験を活かして転職した中途1年目の管理者(管理的職業従事者)の推定年収は1,000万円を超え、すべての経験階級の中で最も高くなっています。
- 転職の賃金変動成功率:雇用動向調査の統計によると、20代や30代〜40代前半の若手・中堅層は転職によって給料が1割以上増加する確率が圧倒的に高く、転職を恐れる必要がありません。
- ベテラン・シニアも輝ける特化市場:40代・50代のベテラン技術者が持つ「現場での施工実績」や「1級土木施工管理技士」などの資格は、深刻な人材不足を抱える発注者支援業務において非常に高く評価され、高年収を維持・アップすることが十分に可能です。
- 右肩上がりの技術者単価:国土交通省の「設計業務等技術者単価」は2013年から14年連続で上昇し続けており、最新の2026年度も前年比4.3%引き上げとなりました。業界全体の原資は年々増強されています。
検証の結果得られた結論は、施工管理技術者が転職に踏み切る際、恐れるべきなのは「勤続年数のリセットによる年収の低下」そのものではない、ということです。
本当に注目し、見極めるべきなのは、「自分の持つ『経験』や『国家資格』という市場価値を、中途採用時にどのように処遇(経験年数換算ルール・資格手当等)として正しく評価してくれる企業か」という一点に尽きます。
社内の閉じた「勤続年数」にとらわれるのをやめ、自身がこれまで厳しい現場で構築してきたキャリアを、最大限の賛辞と待遇で迎えてくれる発注者支援業務というフィールドに目を向けること。将来的キャリアプランと年収を劇的に「得」に変える道に一歩踏み出してみませんか?
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