【原価管理を任された人へ】施工管理技士の原価管理|実行予算の組み方と進め方5ステップ

仕事内容

【原価管理を任された人へ】施工管理技士の原価管理|実行予算の組み方と進め方5ステップ

「今月の原価、どうなってる?」と上司に聞かれて、すぐ数字で答えられるでしょうか。

原価管理は、施工管理技士の仕事のなかでも「予算内に収めろ」とよく言われるわりに、やり方を体系的に教わる機会が少ない業務です。

この記事では、原価管理を任されたばかりの施工管理技士の方に向けて、工事原価の内訳、実行予算の組み方、進め方の5ステップ、原価が膨らむ原因と対策を順に解説します。

あわせて、原価管理を身につけると会社での評価や働き方がどう変わるのかも紹介します。最初の1か月で何を押さえればよいかがわかる内容です。

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施工管理技士の原価管理とは

施工管理技士,原価管理

原価管理とは、工事にかかる費用を計画・記録・比較し、予定した利益を残して工事を終えるための管理業務です。

目的は「工事の利益を守ること」

請負金額は契約時に決まります。そのため、原価が増えた分はそのまま利益が減ります。

工期どおりに完成しても、原価が請負金額を上回れば赤字です。

施工管理技士は、現場でコストの変化に最も早く気づける立場にいます。資材の使いすぎ、作業の待ち時間、重機の遊休などは、現場にいる人にしか見えません。

原価管理は施工管理技士にしかできない仕事だと言えます。

4大管理の中での位置づけ

原価管理は、工程・品質・安全と並ぶ4大管理のひとつです。ただし、ほかの3つとは性格が少し違います。

管理 目的 原価との関係
工程管理工期を守る工期が延びると、仮設材・重機のリース料や現場管理費が増える
品質管理規格を満たす不良や手直しは、材料費と労務費の二重払いになる
安全管理事故を防ぐ事故が起きると工事中止や補償で大きな損失が出る
原価管理利益を残すほかの3つの結果が、最終的に数字として表れる

原価管理は、ほかの3つの管理の「成績表」です。

工程・品質・安全をうまく回せている現場は、結果として原価も守れています。

工程の組み立て方は施工管理の段取り力の記事で詳しく解説しています。

経理・経営者が行う原価管理との違い

項目 施工管理技士 経理・経営者
タイミング工事中にリアルタイムで決算時など事後に
単位担当する1現場会社全体
目的現場の利益を確保する会社の利益確保と受注戦略
主に使う数字実行予算・出来高・実際原価決算書・過去の原価実績

経理は「終わった工事の結果」を集計します。

施工管理技士は「進行中の工事の結果を変える」ことができます。この違いを押さえておきましょう。

まず押さえたい工事原価の内訳

施工管理技士,原価管理

原価管理を始める前に、まず「工事費が何でできているか」を知っておく必要があります。

内訳がわからないまま数字を追っても、どこでお金が増えているのか、どこなら削れるのかを判断できないからです。

ここでは、発注者が積算する工事価格の構成と、受注者が現場で管理する原価の4要素、よく使う用語を整理します。

公共工事の工事価格の構成

公共工事の発注者は、次の構成で工事費を積算します。

請負工事費(契約金額)
工事価格
工事原価 施工管理技士が現場で管理する範囲
直接工事費
工事目的物をつくるために直接かかる費用
材料費/労務費/機械経費 など
間接工事費
共通仮設費
運搬・準備・安全対策・営繕など
現場管理費
現場社員の給与・現場事務所の経費など
一般管理費等
本社の経費と会社の利益
消費税相当額
工事価格にかかる消費税

※国土交通省の土木工事積算の体系をもとに簡略化して作成

施工管理技士が現場でコントロールするのは、主に工事原価の部分です。

発注者はこの構成に沿って、積算基準をもとに予定価格を算出しています。


発注者側の積算については発注者支援業務の積算基準の記事もあわせてご覧ください。

原価の4要素:材料費・労務費・外注費・経費

受注者側の原価管理では、原価を次の4つに分けて管理するのが一般的です。

要素 主な中身 管理のポイント
材料費生コン、鋼材、砕石など数量のロスと単価の変動
労務費自社作業員の賃金作業量に対して人を置きすぎていないか
外注費協力会社への支払い発注範囲の明確化。比重が大きくなりやすい
経費仮設材・重機のリース料、現場事務所費、水道光熱費など使う日数(供用日数)に比例して増える

4つの要素は、増える理由がそれぞれ違います。

材料費は「量と単価」、労務費は「人数と時間」、外注費は「発注範囲」、経費は「日数」で増えます。

原価が予算を超えたときは、どの要素が増えたのかを切り分けると、原因を見つけやすくなります。

覚えておきたい原価管理の用語

原価管理では、似たような「原価」「予算」の言葉がいくつも出てきます。

上司や経理とのやりとりで混乱しないよう、よく使う用語を押さえておきましょう。

用語 意味
見積原価受注前に算出した、工事にかかる見込みの原価
実行予算受注後に施工計画と照らして組み直した、現場の目標原価
発注金額協力会社や資材メーカーと取り決めた金額
実際原価実際に発生した原価
出来高工事全体のうち完成した部分の割合や金額
原価実績竣工後にまとめた最終的な原価のデータ

特に重要なのが「実行予算」と「実際原価」です。

原価管理とは、この2つの差を工事中に見続け、差が広がる前に手を打つ仕事だと言い換えられます。

原価管理の進め方5ステップ

施工管理技士,原価管理

原価管理は、着工前に予算を立てて終わりではありません。

「予算を組む → 原価を固める → 実績と比べる → 計画を直す → 振り返る」という流れを、着工前から竣工後まで繰り返していきます。

ここでは、任されたばかりの方でも手順を追えるよう、道路改良工事の例を使って5つのステップを順に解説します。

①実行予算を組む

最初に、受注金額と目標利益から逆算して実行予算を組みます。

ここでは、請負金額5,000万円(税抜)の道路改良工事を例にします。

費目 実行予算 構成比
材料費1,400万円28%
労務費900万円18%
外注費1,500万円30%
経費700万円14%
工事原価 計4,500万円90%
工事粗利500万円10%

実行予算は、数字だけを机の上で組むものではありません。

工法・工程・人員配置を決める施工計画と一緒に組むことが大切です。施工計画が変われば、実行予算も変わります。

施工計画のまとめ方は施工計画書の記事で解説しています。

②発注・契約で原価を固める

協力会社から見積りを取って比較し、発注範囲をはっきりさせたうえで注文書を交わします。

「どこまでが相手の作業か」があいまいなまま発注すると、あとで追加費用が発生しやすくなります。

価格変動の大きい主要資材は、数量が決まり次第、早めに発注するのも効果的です。

③出来高と実際原価を毎月比べる

原価管理の中心は、月ごとの予算と実績の比較です。

工種 実行予算 出来高率 出来高相当の予算 実際原価 差異
土工800万円60%480万円540万円+60万円(超過)
擁壁工1,200万円40%480万円450万円−30万円
舗装工600万円0%0円0円0円

ポイントは、支払った金額だけを見て判断しないことです。

出来高と並べてはじめて、「進み具合に対してお金を使いすぎていないか」がわかります。

あわせて、竣工時にいくらで着地するかという「最終見込み原価」も毎月更新しましょう。

④差異の原因を分析し、施工計画を修正する

    上の例では、土工が60万円超過しています。

    原因が想定外の湧水によるポンプ追加と作業効率の低下だったとします。

    • 設計条件と現場が違ったことが原因 → 発注者との変更協議の対象になる(次の章で解説)
    • 自社の段取りが原因 → 工程・人員・機械の組み合わせを見直す

    原因を見誤ると、取り戻せるはずの費用を自社でかぶってしまいます。

    ⑤竣工後に原価実績を振り返る

    工事が終わったら、工種ごとの実績単価(1m³あたり、1mあたりなど)を記録に残します。

    このデータが、次の工事の見積りと実行予算の精度を上げます。

    原価が膨らむ5つの原因と対策

    施工管理技士,原価管理

    実行予算をきちんと組んでも、工事中に原価が膨らむことはよくあります。

    現場で起こりやすい原因は、次の5つです。

    原因 起きること 対策
    手戻り・やり直し材料費と労務費の二重払い施工前の図面照査、こまめな検測
    仮設材・重機の長期化リース料と現場管理費が日数に比例して増える工程の前倒し、返却日の管理
    資材価格の高騰単価の差がそのまま原価増になる早期の発注・数量確定、スライド条項の確認
    労務の過剰配置待ち時間にも人件費がかかる毎日の出面確認、作業量に合わせた配置
    追加工事の未精算指示どおり施工しても請負額に反映されない指示を書面(打合せ簿)で残し、変更協議へ

    5つのうち4つは、工程・品質・段取りの問題です。原価だけを見張っていても原価は下がりません。

    現場の段取りそのものを良くすることが、いちばん確実な原価管理です。

    設計変更・スライド条項で原価を取り戻す

    原価管理は「削る」だけの仕事ではありません。

    本来受け取るべき費用をきちんと請求することも、施工管理技士の重要な役割です。

    設計変更協議で増額を認めてもらうには

      公共工事では、設計図書と現場の条件が違う場合、発注者と協議したうえで設計変更や請負代金の変更の対象になります。

      増額を認めてもらうには、次の3つが欠かせません。

      • 発注者からの指示や協議の内容を、工事打合せ簿で書面に残す
      • 数量の根拠と写真をそろえる
      • 施工する前に協議する(事後の申し出は認められにくい)

      資材高騰に備えるスライド条項

      工期中に物価や賃金が大きく変動した場合、契約書のスライド条項にもとづいて請負代金の変更を請求できます。

      種類 対象 請求の目安
      全体スライド工期が12か月を超える工事契約日から12か月経過後、残工事金額の変動が1.5%を超える場合
      単品スライド鋼材・燃料など特定資材の価格の急変対象資材の価格変動が対象工事費の1%以上
      インフレスライド賃金・物価の急激な変動残工事に相当する請負代金額の1%を超える部分

      全体スライドとインフレスライドは、基準日から残工期が2か月以上あることが条件です。

      運用の細部は発注者ごとに異なるため、必ず契約書と運用基準を確認しましょう。

      さらに、第三次・担い手3法として改正された建設業法が、2025年12月12日に全面施行されました。

      資材高騰時の請負代金の「変更方法」が契約書の法定記載事項になり、受注者は契約前に資材高騰につながる「おそれ情報」を通知することが義務づけられました。

      通知を受けた発注者には、高騰が顕在化した場合に協議に応じる義務があります。

      価格変動のリスクを契約前から把握しておくことも、これからの原価管理に含まれます。

      協力会社への無理なコストダウンは逆効果

      利益を出したいあまり、協力会社に根拠のない値下げを求めるのは避けましょう。

      品質や安全が低下するリスクがあり、信頼関係も損ないます。発注者の運用通知でも、契約金額が増額された場合には、下請企業との契約金額の見直しや技能労働者の賃金引上げへの対応が求められています。

      原価管理を身につけると施工管理技士の働き方はどう変わる?

      施工管理技士,原価管理

      原価管理は「会社のため」の仕事に見えます。
      しかし実際には、施工管理技士本人の評価や生活に直結するスキルです。

      「利益を残せる人」として評価され、所長・現場代理人を任されやすくなる

      会社が現場を任せる人を選ぶときは、工期・品質・安全に加えて「利益を残せるか」を見ています。

      原価を読める技術者は、より大きな現場や責任ある立場を任されやすくなります。
      それが役職や待遇の向上につながります。

      昇給や賞与の査定で、成果を数字で示せる

      「頑張りました」ではなく、「実行予算比で〇〇万円改善しました」「変更協議で〇〇万円の増額を認めてもらいました」と説明できるようになります。

      評価制度は会社によって違いますが、成果を数字で語れる人は査定面談で説得力が増します。

      資格による収入の差については施工管理技士の資格手当の記事で解説しています。

      手戻りやムダが減り、残業や休日出勤が減る

      原価管理で見つかるムダの多くは、手戻り・待ち時間・やり直しです。

      これらはお金のムダであると同時に、時間のムダでもあります。
      2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。
      段取りよく原価を守れる人ほど早く帰れるようになり、家族と過ごす時間や休日を取り戻せます。

      転職市場でも「数字に強い技術者」は強い

      原価管理の経験は、立場を変えても活かせます。

      特に相性が良いのが、発注者側で積算や工事監督を支える発注者支援業務です。

      項目 受注者(施工管理技士) 発注者側(発注者支援業務)
      扱う数字実行予算・実際原価予定価格・積算額
      目的利益を残す適正な価格で発注する
      根拠自社の実績単価・見積り国の積算基準・労務単価
      設計変更のとき増額を求める変更内容を確認し、積算する

      同じ工事費を、反対側から見る仕事です。

      原価管理の経験がある人は、「受注者がどこでコストを気にするのか」「どんな根拠があれば変更が妥当と言えるのか」を肌感覚で理解しています。
      そのため、積算技術業務や工事監督支援業務で即戦力として評価されやすくなります。

      ▶この記事では原価管理の経験の活かし方を整理していますが、「自分の経験が発注者支援業務でどう評価されるかを具体的に知りたい」という方は、転職支援サービスを活用するのも有効な方法です。建設業界に詳しいプロに相談しながら、あなたの資格と経験に合った働き方の見通しを整理できます。

      まとめ:原価管理は「守る」と「取り戻す」で現場を任される技術者になる仕事

      施工管理技士,原価管理
      • 原価管理は、工程・品質・安全の結果が数字に表れる「成績表」
      • 工事原価は材料費・労務費・外注費・経費の4要素で管理する
      • 進め方は、実行予算 → 発注 → 出来高との比較 → 計画の修正 → 振り返りの5ステップ
      • 削るだけでなく、設計変更やスライド条項で正当に取り戻すことも仕事
      • 原価管理ができる人は、評価・働き方・転職のすべてで有利になる

      原価管理は、現場を任される技術者になるための必須スキルです。
      そして、その経験は発注者側でも活かせます。

      今の現場での経験を、次のキャリアにつなげていきましょう。

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