1級土木施工管理技士の施工計画書とは？作成の流れと必要なスキルを初心者向けに解説

2025-11-25建設情報コラム

土木施工管理の仕事に興味があるけれど、「施工計画書」と聞いてもピンとこない方も多いのではないでしょうか。
施工計画書は、工事を安全かつ効率的に進めるための設計図のような存在で、施工管理技士の重要な業務の一つです。

本記事では、これから施工管理の仕事に挑戦したい方に向けて、施工計画書の基本から作成の流れ、必要なスキルまで分かりやすく解説します。

施工計画書とは？1級土木施工管理技士の基本業務

施工計画書は、工事を円滑に進めるための総合的な計画をまとめた書類です。
1級土木施工管理技士として大規模工事を担当する際に欠かせない重要業務であり、工事の成否を左右する基盤となります。

ここでは施工計画書が果たす役割と、施工管理業務における位置づけについて詳しく見ていきましょう。

1級土木施工管理技士の資格にこれからチャレンジしたいという方は、こちらの記事で勉強方法などを解説しています。

施工計画書が果たす役割

施工計画書は、設計図書に基づいて「どのように工事を進めるか」を具体的に示す書類です。
工事の受注者（施工会社）が作成し、発注者（国や自治体など）に提出して承認を得る必要があります。

この書類は工事関係者全員が共有する「工事の進め方のルールブック」として機能し、以下のような重要な役割を担っています。

工事の手順や工法を明確に示す
安全管理、品質管理、工程管理の基準を定める
使用する機械や資材、作業員の配置を計画する
発注者と受注者の認識を統一し、トラブルを未然に防ぐ

計画が不十分だと、工事の遅延や安全事故、品質不良などのリスクが高まります。
そのため、現場の実態に即した実行可能な計画を立てることが求められるのです。

施工管理の仕事における位置づけ

施工計画書の作成は、工事受注後に最初に取り組む重要業務の一つとなります。
現場での作業監督だけでなく、このようなデスクワークも施工管理の大切な仕事です。

計画書の質が工事全体の効率性や安全性を決定するため、1級土木施工管理技士として大規模工事を担当する際には、高い計画立案能力が必要になります。
特に請負代金が4,000万円以上の工事では、監理技術者として施工計画書を作成・管理する責任が生じるでしょう。

また、この書類は工事完了後の成績評価にも使用されます。
発注者からの信頼獲得や次回受注につながる重要な書類でもあるため、丁寧な作成が求められるのです。

1級土木施工管理技士が施工計画書を作成する流れ

施工計画書の作成は、工事開始の数週間前から始まり、複数の段階を経て完成に至ります。
受注から着工までの実際の作業の流れを時系列で理解することで、この業務の全体像が見えてくるでしょう。

ここでは各段階で必要な作業と、注意すべきポイントについて解説していきます。

1級土木施工管理技士取得のメリットについてはこちらの記事で解説しています。

着工前の準備段階（受注から作成開始まで）

施工計画書の作成は、工事を受注した直後から始まります。
まずは以下の準備作業が必要です。

契約書類と設計図書の確認

契約書、設計図書、仕様書などを詳細に確認し、工事内容、工期、請負金額などの基本情報を把握します。
設計図書で指定されている材料や工法についても、この段階で確認しておきましょう。

現場の事前調査

実際の工事現場を訪れ、地形、周辺環境、アクセス道路、既存構造物などを調査します。
現場写真を撮影し、地域住民への配慮が必要な点や、工事の制約条件などを記録しておくことが重要です。

発注者との打ち合わせ

発注者と打ち合わせを行い、要望や特別な注意事項を確認します。
この段階で認識のずれがあると、後の手戻りにつながるため、不明点は必ず質問するようにしてください。

協力会社の選定

下請業者（協力会社）を選定し、見積もりを依頼します。
専門工事については、実績のある協力会社との連携が不可欠となるでしょう。
準備期間の目安としては、工事開始の3週間〜1ヶ月前からスタートするのが一般的です。

工事規模が大きい場合は、さらに長い準備期間を確保することもあります。

施工計画書の作成手順

準備が整ったら、実際の施工計画書作成に入ります。
以下の手順で進めていくのが基本的な流れです。

ステップ	作業内容
1. ひな形の入手	日本建設業連合会や各自治体が公開しているテンプレートを入手する
2. 工事概要の記入	工事名、場所、工期、請負金額、発注者、受注者などの基本情報を記載
3. 工程表の作成	バーチャートやネットワーク工程表で作業の流れを可視化する
4. 施工方法の記載	各工種ごとの具体的な手順、使用機械、注意点を詳細に記述
5. 安全・品質管理計画	安全対策、品質基準、検査方法などを明確に定める
6. 組織体制と資機材	担当者の配置、使用機械の規格、主要資材の種類と数量を記載

　　　
ひな形を使用する場合でも、そのまま流用せず、必ず自分の工事に合わせて内容を調整する必要があります。
過去の類似工事の計画書を参考にしながら、現場特有の条件を反映させていくことが大切です。

作成中は、先輩や上司に相談しながら進めることをおすすめします。
初めて担当する工種や工法については、経験者のアドバイスが貴重な学びになるでしょう。

提出から承認までの流れ

施工計画書が完成したら、以下のプロセスを経て工事着工へと進んでいきます。
まず、社内で上司や品質管理部門によるチェックを受けます。記載漏れや矛盾点がないか、現実的な計画になっているかを確認し、必要に応じて修正を行いましょう。

次に、監督職員（発注者側の担当者）へ提出します。監督職員は提出された計画書の内容を確認し、安全性や施工方法の妥当性、法令遵守などをチェックするのです。
内容に不備がある場合や追加説明が必要な場合は、「手戻り」として修正・再提出を求められることがあります。この手戻りを防ぐためには、提出前の入念なチェックが重要となります。

承認が下りれば、ようやく工事着工が可能になります。
ただし、工事中に重要な変更が生じた場合は、変更施工計画書を提出する必要があるので注意してください。

施工計画書の作成に必要な記載項目

施工計画書には、工事を円滑に進めるための多岐にわたる情報を記載する必要があります。
記載項目は工事の種類や規模によって異なりますが、基本的な構成は共通しています。

ここでは、必ず記載すべき項目とその内容について詳しく見ていきましょう。

1級土木施工管理技士の年収の実態については、こちらの記事で詳しく解説しています。

基本情報と工程表

施工計画書の冒頭には、工事の基本情報を明記します。
以下の項目は必須となります。

工事名（正式名称を略さずに記載）
発注者名（国土交通省○○地方整備局など）
受注者名（自社の正式名称）
工期（開始日と完了予定日）
請負金額
工事場所（所在地を明確に）
工事内容（主な工種と施工量）

工程表は、各作業の開始時期と終了時期を視覚的に示す重要な資料です。
バーチャート形式が最も一般的で、横軸に時間、縦軸に工種を配置して作成します。

工程表を作成する際は、以下の点に注意が必要です。

気象条件（雨期、降雪期、台風シーズンなど）を考慮すること
土日や祝日、地域の行事なども考慮に入れること
各工種間の関連性を考慮し、無理のないスケジュールにすること
契約書に添付された工程表との整合性を確認すること

現実的で実行可能な工程を組むことが、工事を成功に導く第一歩となるでしょう。

安全管理と品質管理

安全管理と品質管理は、施工計画書の中でも特に重要な項目となります。
工事完了後の成績評価にも大きく影響するため、丁寧に計画を立てる必要があるのです。

安全管理計画に記載すべき内容

項目	記載内容
安全衛生管理組織	安全管理責任者、現場代理人、各作業の安全担当者の配置
危険予知活動	KY活動（危険予知訓練）の実施計画と頻度
具体的な安全対策	熱中症対策、墜落防止対策、重機災害防止対策など
緊急時の連絡体制	事故発生時の連絡先、病院の場所、避難経路など
安全教育計画	新規入場者教育、特別教育の実施計画

　　　
特に夏季の熱中症対策や、高所作業における墜落防止対策など、現場の特性に応じた具体的な対策を記載することが求められます。

品質管理計画に記載すべき内容

品質管理計画では、以下の内容を明確にしていきます。

使用材料の品質基準（JIS規格など）
試験・検査の項目と実施頻度
品質管理の責任者と体制
出来形管理の方法と許容範囲
不良品が発生した場合の対応手順

品質管理基準は、国土交通省の「土木工事施工管理基準」などに基づいて設定します。
社内基準がある場合は、より厳しい基準を採用することもあるでしょう。

資材・機械・組織体制

工事に使用する資材や機械、そして現場の組織体制についても、施工計画書に詳細を記載する必要があります。
これらの情報は、工事の実行可能性を判断する重要な要素となるのです。

主要資材の記載内容

コンクリート、鉄筋、砕石、アスファルトなど、工事で使用する主要な材料について、以下の情報を記載します。

材料の種類と規格
使用数量
搬入時期
納入業者名
品質証明書の有無

資材の搬入時期は、工程表と整合性を取る必要があります。
その資材を使用する工程の開始日より前に搬入が完了するよう計画しましょう。

主要機械の記載内容

バックホウ、クレーン車、コンクリートポンプ車など、使用する建設機械について記載していきます。

機械の種類と型式
規格（容量、能力など）
台数
使用期間

指定機械（発注者が使用を指定する機械）がある場合は、必ずその機械を記載し、カタログや仕様書を添付してください。

現場組織表の記載内容

現場における組織の編成と役割分担を明確にします。

現場代理人（現場の総責任者）
主任技術者または監理技術者
専門技術者（必要な場合）
各工種の責任者
協力会社との関係

建設業法により、一定規模以上の工事では主任技術者または監理技術者の配置が義務付けられています。
1級土木施工管理技士は、請負金額に関わらず監理技術者になることができるのです。

施工計画書作成における注意点とポイント

施工計画書を作成する際は、いくつかの重要なポイントがあります。
これらを押さえることで、手戻りを防ぎ、質の高い計画書を作成することができるでしょう。

ここでは、実務で役立つ具体的な注意点を解説していきます。

施工管理技士の種類についてこちらの記事で詳しく解説しています。
施工管理技士についてさらに詳しく知りたい方はチェックしてみましょう。

分かりやすさを重視する

施工計画書は、工事に関わる多くの人が読む書類です。
作成者だけが理解できる内容では意味がありません。

すべての工程において、以下の要素を明確に記載することが大切です。

誰が（Who）：担当者や責任者は誰か
いつ（When）：作業の開始時期と完了時期はいつか
どこで（Where）：作業を行う場所はどこか
何を（What）：どんな作業を行うのか
なぜ（Why）：その工法や手順を選んだ理由は何か
どのように（How）：具体的にどう施工するのか

　　　
これらを意識して記載することで、誰が読んでも理解できる計画書になります。

専門用語は必要最小限にし図面や工程表を活用

専門用語を使う場合は、簡単な説明を添えるか、初めて読む人でも分かるような表現を心がけましょう。

また、文章だけでなく、図面、写真、工程表などを効果的に使用することで、視覚的に理解しやすい計画書になります。
特に複雑な施工手順を説明する場合は、フロー図や断面図を用いると効果的でしょう。

手戻りを防ぐための確認事項

施工計画書の「手戻り」（差し戻し）は、工事開始の遅れにつながります。
提出前に以下の点を入念にチェックすることが重要です。

確認項目	チェックポイント
契約書との整合性	工期、工事内容、金額に矛盾はないか
設計図書との整合性	指定された材料や工法を使っているか
現場条件との整合性	実際の現場で実行可能な計画になっているか
工程表の整合性	各工種の日程に矛盾や無理はないか
記載漏れの確認	必要な項目がすべて記載されているか

　　　
提出前には、複数人でダブルチェックを行うことをおすすめします。
自分では気づかない矛盾や記載漏れを、他の人の目で発見できることが多いからです。

また、早めに作成を開始し、余裕を持ったスケジュールで進めることも重要となります。
締め切りギリギリで作成すると、確認作業が不十分になり、手戻りのリスクが高まるでしょう。

さらに、過去の類似工事で発注者から指摘を受けた点があれば、その教訓を活かすことも大切です。
社内で情報を共有し、同じミスを繰り返さないよう注意してください。

まとめ：施工計画の作成は施工管理の基本となる重要業務

施工計画書の作成は、1級土木施工管理技士として大規模工事を担当する際に欠かせない重要業務です。
最初は専門用語や記載項目の多さに戸惑うかもしれませんが、テンプレートの活用や先輩のサポートを受けながら、徐々にスキルを身につけることができます。

工事の成否を左右する責任ある仕事だからこそ、完成したときの達成感は大きく、専門性の高いキャリアとして市場価値も高まります。
これから施工管理の仕事に挑戦したい方は、まず2級土木施工管理技士の取得を目指しながら、実務経験を積んでいくことをおすすめします。
施工計画書の作成スキルは、施工管理者としてのキャリアを築く重要な基礎となるでしょう。

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