【発注者支援業務】なぜ年収が安定?景気に強いキャリアの真実を解説

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2025-12-01建設情報コラム

【発注者支援業務】なぜ年収が安定?景気に強いキャリアの真実を解説
建設業界でのキャリアを考える際、多くの人が抱える共通の悩み、それは「景気に左右されず、安定して稼げるのだろうか?」という不安ではないでしょうか。

特に、建設業界は景気変動の影響を受けやすいと言われることもあり、将来への一歩を踏み出すのをためらってしまう方もいるかもしれません。

しかし、ご安心ください。建設業界の中でも、ある特定の職種は、確固たるデータと構造的な背景に基づき、不況時でも底堅い年収を維持できる「安全牌」として注目を集めています。それが「発注者支援業務(公共工事の発注者をサポートする仕事)」です。発注者支援業務とはどのような仕事なのかはこちらの記事をご覧ください。

この記事では、なぜ発注者支援業務が「安定して稼げる」と言われるのか、その論理的な根拠を、公共投資のデータや業界構造、そして公的な賃金動向といった確実なソースに基づき、徹底的に解明していきます。

あなたがもし、キャリアチェンジや、安定したキャリア設計を目指す方であれば、この記事を読むことで、発注者支援業務が提供する年収の安定性と景気耐性の高さを数字で理解し、安心して次の一歩を踏み出すことができるでしょう。
技術者の男性が発注者支援での仕事で成功した様子

なぜ発注者支援業務は「景気に強いキャリア」と言えるのか?

発注者支援業務は、国や地方公共団体が発注する公共工事の技術的なサポートを担います。この業務の最大の特徴であり、安定性の源泉となっているのは、業務の性質上、公共投資に強く依存しているという点です。

公共投資とは、具体的にどのような特性を持ち、どのようにして景気の波からキャリアを守ってくれるのでしょうか。

公共投資に支えられた安定性の構造

建設投資全体を見ると、過去には大きな変動がありました。日本の建設投資額は、ピーク時の平成4年度に約84兆円を記録しましたが、その後は減少し、平成22年度には約41兆円まで落ち込んでいます(ピーク時から約38%の減少です)。

しかし、重要なのは、その後に増加傾向に転じているという事実です。

2025年度の建設投資見通しは75兆5,700億円とされており、建設投資自体は再び活発化していることがわかります。

発注者支援業務が関わるのは、主にこの建設投資の中でも「政府投資」、つまり公共工事の主要な資金源となる部分です。政府投資は、国民生活に不可欠な社会資本(インフラ)の整備や維持管理を目的としているため、民間投資のように市場の急激な需要減によって予算が大幅にカットされるリスクが低いのです。
建設コンサルタントが担う公共事業の役割に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。

発注者支援業務は、この「景気変動に左右されにくい公共部門の仕事」を担っているため、民間工事と比べて業務量が急激に減るリスクが低く、安定した業務量を確保しやすい構造にあります。

民間投資との比較に見る政府投資の役割

建設投資は大きく分けて、景気動向に敏感な民間投資と、政策的に運営される政府投資(公共工事)に大別されます。

景気が激しく変動する時期、政府投資は経済対策として意図的に活用される傾向があるのです。これにより、政府投資の変動幅は、民間投資と比較して抑えられやすい特性を持ちます。

例えば、2025年度の建設投資見通しでは、民間投資が前年度比4.5%増と高い伸びを示す一方、政府全体の建設投資は前年度比0.7%増と、その伸び率は比較的緩やかです。これは、民間が好景気に大きく左右されるのに対し、公共部門は安定的な成長を見込んでいることの裏返しとも言えるでしょう。

景気の急な落ち込みがあったとしても、政府は経済全体を支えるためにインフラ投資を続けるため、発注者支援業務の需要が極端に冷え込むことは構造的に考えにくいのです。
発注支援業務で真剣に仕事に取り組む男性

公共工事の構造変化が保証する長期的な業務需要

発注者支援業務の安定性は、単に予算が安定的であるという点に留まりません。日本の社会資本が抱える構造的な課題が、この業務の長期的な需要を確固たるものにしています。

特に注目すべきは、建設投資全体における「維持修繕工事」の割合の増加です。これは、業務の安定性を支える最も重要な構造変化の一つと言えるでしょう。

深刻化するインフラ老朽化と維持修繕の増加

私たちの生活を支える公共土木構造物の老朽化は、現在、非常に深刻な課題となっています。

この課題は、景気動向とは無関係に、国民生活の安全を確保するために必ず対応しなければならない、不可避の建設需要を生み出しています。
具体的なデータを見てみましょう。
建設後50年以上経過する道路橋(橋長2m以上の約70万橋のうち)の割合
  • 平成25年3月時点:約18%
  • 約20年後の平成45年3月(2033年):約67%に達する見通し
このように、老朽化の波は、橋だけでなく、トンネルや河川管理施設なども含めて進行しています。

さらに、民間建築物においても、築後30年を超える分譲マンションが平成48年末までに約194.8万戸に増加する見込みであり、大規模修繕の需要も高まっています。

公共部門の維持修繕工事の割合は、新設工事の急激な減少に伴って大幅に増加しており、これが発注者支援業務の長期的な業務安定性を確固たるものにしているのです。インフラが続く限り、老朽化対策としての需要は途切れることがありません。

建設業界全体の構造的な人材不足と高齢化の現状

発注者支援業務の需要を押し上げているもう一つの構造的背景は、建設業界が直面する深刻な人材不足と高齢化です。

建設業の就業者数は、平成9年平均の685万人をピークに減少し続け、平成28年平均には492万人と、約28%も減少しました。
そして、この業界の高齢化は特に著しい状況です。
就業者年代別の割合
  • 55歳以上の割合:約34%
  • 30歳から54歳の割合:約55%
  • 29歳以下の若年層:約11%
この傾向が続けば、「10年後には大半が引退する」と見通されており、次世代への技術承継が喫緊の課題となっています。
建設業界の深刻な人材不足と、経験豊富な40代技術者への需要に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。

建設企業は現在、「工事量や利益率は一定改善傾向にあるが、人手や後継者問題といった新たな課題の比重が高まっている」という状況に直面しています。

公共工事を円滑に実施するためには、発注者支援業務を含む熟練した技術サポートが不可欠です。業界全体で技術者が不足している構造下において、公共事業の技術支援を担う人材の需要は極めて高く、景気後退期であっても、この分野の求人が大きく減ることは構造的に考えにくいのです。
建築インフラの老朽化の増加を表すレトロなグラフ

年収が下がりにくい!賃金水準を支える公的メカニズム

業務量が安定しているだけでなく、発注者支援業務で働く技術者の年収水準が底堅く推移するのには、政府による適正なコスト計上推進策という、明確な公的サポートが背景にあります。

ここでは、公共工事における賃金の透明性と安定性を確保するための仕組みを見ていきましょう。

公共工事設計労務単価の継続的な上昇トレンド

公共工事の予定価格を積算する際に用いられる「公共工事設計労務単価」は、この分野で働く技術者・労働者の報酬水準の安定性を測る上で非常に重要な指標です。

この労務単価は、公共事業労務費調査に基づき、適正な賃金水準を反映するように運用されています。

注目すべきは、その推移です。令和7年3月適用分では、全国全職種の単純平均が前年度比6.0%引き上げられました。驚くべきことに、この改定は平成25年度から13年連続の上昇であり、全国全職種の加重平均値は24,852円となっています。

この労務単価には、法定福利費相当額や、時間外労働の上限規制への対応に必要な費用が反映されています。
発注者支援業務の年収相場や、給与に影響を与える要素に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。

公共工事における賃金水準が安定的に上昇傾向にあることは、この分野の業務に携わる人材の報酬水準の底堅さを直接的に支える要素となるのです。

適正なコスト計上を促す政府の対策と収益改善

発注者支援業務の技術者の年収が安定するもう一つの要因は、適正な賃金支払いを担保するための国の取り組みです。

まず、建設業界全体の収益環境は改善傾向にあります。平成27年度時点の売上高営業利益率は、大企業で4.5%、中堅企業で3.8%、中小企業で3.5%と、概ね改善していました。この収益環境の改善が、企業全体の賃金水準の維持・向上に寄与していると言えます。実際、建設業の男性生産労働者の平均年収額は、平成28年時点で418万円と、製造業の394万円と比較しても高い水準にあります。

さらに、政府は、公共工事の積算において「必要経費」の取り扱いを明確化し、賃金が適正に支払われる環境を整備しています。

ここで理解しておきたいのは、「公共工事設計労務単価」が、労働者本人が受け取る賃金相当額であり、事業主が負担すべき必要経費(法定福利費、労務管理費、安全管理費など)は含まれていない、ということです。
国は、労務単価が24,852円の場合、事業主が労働者一人の雇用に必要な経費は、実に35,041円(労務単価の141%)に上ると明示しています。

国は、この労務単価と必要経費を含む金額を並列表示することで、「労務単価に必要経費が含まれていないこと」を明確化しました。これにより、下請代金からの必要経費分の値引きといった不当行為を防止する対策が講じられています。

このような公的な取り組みによって、公共工事に関わる技術者や労働者に対し、適正な賃金が支払われる環境が整備されており、これが発注者支援業務の技術者の年収の底堅さにつながっているのです。
技術者の女性が発注支援業務の上昇トレンドに乗って喜んでいる様子

発注者支援業務の未来:デジタル化とキャリアアップの可能性

安定した業務量と年収の底堅さが魅力の発注者支援業務ですが、将来的なキャリアを考える上で、この仕事の進化についても知っておく必要があります。

建設業は、就業者・時間あたりの付加価値労働生産性が他の産業(全産業、製造業、卸売・小売業)を下回っているという生産性の課題を抱えており、これを克服するためにデジタル化が喫緊の課題となっています。

発注者支援業務の技術者は、このデジタル化の波に乗ることで、さらなる高みを目指すことが可能です。

求められるCIM/BIMやICT技術への対応

発注者支援業務は、公共工事の発注者側に立って業務をサポートします。そのため、今後はCIM/BIM(建設情報のモデリング技術)やICT(情報通信技術)を活用した業務推進能力が不可欠となるでしょう。

デジタル化は、単に効率化を進めるだけでなく、技術者としての価値を高める要素でもあります。
「技術者」の確保・育成のための施策
  • ジョブ型雇用をはじめ、技術者の立場を尊重した人事制度の導入を積極的に進めること。
  • 他の業界に見劣りしないよう人的資本投資を強化すべきであること。
  • 技術者のデータベース整備による官民の垣根を超えた人材の流動化を促すこと。
これらの施策は、高度な技術や専門性を備えた技術者を、業界全体で優遇し、適正に評価しようという強い意志の表れです。発注者支援業務で、CIM/BIMなどのデジタル技術を習得し活用できる技術者は、市場価値が非常に高まることが期待されます。

生産性向上と適正報酬により高まる年収レンジ

公共事業においては、過度な価格競争を抑制し、品質を確保するための制度見直しが進められています。

例えば、長野県のように、総合評価方式での調査基準価格の下限が引き上げられる動きが見られます。

このような「適正な価格での発注」は、公共工事の質を確保する上で非常に重要です。そして、それは結果的に、高付加価値業務を担う技術者への適正な報酬支払いを後押しすることにつながります。

デジタル技術や高度な専門性が求められる発注者支援業務の技術者は、生産性向上と適正価格の潮流にうまく乗ることで、将来的に高い年収レンジを享受する可能性が高いと言えるでしょう。

安定した業務基盤(公共投資)の上で、付加価値の高いデジタル技術を習得すれば、あなたのキャリアは安定性と将来的な高収入の両方を手に入れることができるのです。これは、まさに「安全牌」としての価値を最大化する道筋ではないでしょうか。
施工管理からの転職で年収1,000万円を目指す具体的な戦略に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。
BIM、CIMを身につけて高い年収で満足する技術者

まとめ:発注者支援業務はあなたのキャリアの「安全牌」となる

これまでのデータと論理的な分析に基づき、発注者支援業務が「安定して稼げる」仕事である根拠を振り返りましょう。
1.公共投資の景気耐性がある
・景気変動の影響を受けにくい政府投資に業務が強く依存しています。
・インフラ老朽化の維持修繕という構造的な需要が、不況時でも継続的な業務量を担保しています。

2.構造的な人材不足がある
・建設業の高齢化と就業者数の急激な減少により、公共事業の円滑な実施に必要な技術者・後継者層の需要は不況時でも底堅いです。

3.賃金が公的に担保されている
・公共工事設計労務単価の継続的な上昇(13年連続)と、適正な必要経費の積算を促す公的な取り組みにより、賃金水準が安定的に維持されています。
キャリアチェンジを検討されている方や、建設業界を目指す人々にとって、発注者支援業務は、業務量や年収が大きく変動しにくい、論理的に安定したキャリアパスであると結論づけられます。

確実なデータが示すこの安定性は、あなたのキャリア設計における非常に重要な「安全牌」となるでしょう。

もしあなたが、安定性と専門性を兼ね備えたキャリアを築きたいと望んでいるなら、今こそ発注者支援業務へのキャリアチェンジを具体的に検討すべき時かもしれません。

まずは専門の転職サイトを覗き、あなたが培ってきた経験がどのように公共工事の現場で活かせるのか、具体的な求人情報から確認してみることをお勧めします。あなたの持つ技術は、この国にとって不可欠な財産なのですから、ぜひその価値を最大限に発揮できる場所を見つけてください。

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