発注者支援業務のデメリット『働き方・実態ギャップ』を潰す3つの質問

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建設情報コラム

2025-11-11

発注者支援業務のデメリット『働き方・実態ギャップ』を潰す3つの質問

興味をそそられる発注者支援業務。でも「なんとなく良さそう」で決めていいのか?

近年、「建設業界の働き方改革を支える」という魅力的な謳い文句で注目を集めているのが、発注者支援業務です。

特に建設業界の知識が少ない方や、長時間労働からの脱却を目指す転職検討者にとって、発注者支援業務は「残業が少ない」「休日が取りやすい」「デスクワークが多い」といった、ポジティブなイメージを抱きやすいかもしれません。確かに、国主導で進められている働き方改革の波に乗り、発注者側での業務効率化が進められていることは間違いありません。
発注者支援業務の具体的な内容について詳細はこちらの記事をご覧ください。

しかし、どんな仕事にも「光」と「影」があるものです。もしあなたが「なんとなく良さそう」というイメージだけで飛び込んでしまうと、入社後に「こんなはずじゃなかった」とミスマッチに苦しむことになるかもしれません。実は、発注者支援業務には、発注者側の体制不足や運用不徹底に起因する、無視できない「デメリット」や「運用上の課題」が依然として残っているのです。

この記事では、建設業界の構造的な課題と、発注者支援業務の現場で生じている「発注者支援業務のデメリット」について、データに基づき冷静に解説します。

そして、あなたが本当にその仕事が自分に合っているのかどうかを見極めるために、入社前に企業に絶対に聞くべき3つの具体的な質問を整理してお伝えします。この3つの質問を事前に知っておくことで、あなたは現場のリアルな発注者支援の実態を把握し、希望と現実のギャップを潰すことができるでしょう。
光の中で仕事をする技術者と影の中で仕事をする技術者

発注者支援業務の実態とは?「働き方改革の光と影」

発注者支援業務がなぜこれほどまでに重要視されているのか、その背景には、建設業が長年抱えてきた深刻な長時間労働の構造的な問題があります。

建設業の長時間労働を生む構造的要因

建設業は、他の全産業と比較して年間出勤日数が12日多く、年間の総実労働時間も68時間長いという、構造的な長時間労働の課題を抱えています。この背景には、少子高齢化による担い手不足(就業者数がピーク時から約30%減少)や、就業者の高齢化(55歳以上が36.6%)といった問題が深く関わっています。
施工管理技士の残業時間の実態について詳細はこちらの記事をご覧ください。

長時間労働の要因は、現場で働く受注者(施工会社)側の努力だけでは解消しがたく、むしろ発注者側の構造的な問題が深く関与していることが指摘されています。

発注者支援業務は、こうした受注者への業務負担の偏りを解消し、発注者側がリードして働き方改革を推進するために打ち出された具体的な支援策なのです。

発注者支援の「光」(メリット)がもたらす変化

国(国土交通省)主導のもと、発注者支援がもたらしている具体的なメリットには、以下のようなものがあります。
  • 週休2日制の推進: 国土交通省の直轄工事における週休2日制工事の実施率は、令和4年度(2022年度)には通期で99.6%に達しています。さらに、週休2日制工事の実施に伴う労務費や現場管理費の増加分は、発注者側が経費を予定価格へ反映させる措置を取っており、約80%の企業が積極的に受注したいと回答しています。
  • 書類作成業務の劇的なスリム化: 受注者の負担を減らすため、工事検査書類を従来の44種類から10種類に限定する取り組みが原則化されました。
  • ICT技術の活用: Web会議ツールや電子決裁ツールなどのデジタルツールが活用され、特に発注者と連携する「遠隔臨場」や「ASPの活用」といったICT活用策は、実施した企業の50%以上が効果を実感しています。
このように、発注者支援業務は、建設業全体の労働環境を改善する上で、非常に大きな役割を果たしていることは確かです。
技術者の男性が、発注支援業務のメリット享受し喜んでいる

【働き方ギャップを潰す】入社前に聞くべき3つの質問

発注者支援業務の理想と実態のギャップ、すなわち「発注者支援業務 デメリット」は、主に「施策の運用不徹底」「発注者側の体制不足」に起因します。
これらの課題は、あなたが実際に働く環境に直結します。そこで、入社後のミスマッチを避けるために、企業に深掘りして聞くべき3つの質問を、それぞれの実態データと共に解説します。

質問①:残業・休日・働く場所の実態(働き方編)

「発注者支援業務=残業が少ない」というイメージは、必ずしも現場の全てに当てはまるわけではありません。発注者支援業務は、発注者のマンパワー不足を補う役割を担うため、その不足分がそのまま業務負担となって降りかかってくる可能性があるのです。
発注者支援業務によるワークライフバランス改善の詳細について詳細はこちらの記事をご覧ください。
Q:週休2日制の浸透度に「地域差」はないか?
国交省の直轄工事では週休2日が浸透していますが、あなたが働く場所によって、その適用状況は大きく異なります。
【聞くべき質問例】
◇「現在参画されている案件は、どのような発注者(国、地方自治体、民間)の案件が中心ですか?」
◇「現在担当されている工事において、週休2日制はどの程度実現されていますか?」

公共工事については国の施策により週休2日が浸透しつつありますが、特に以下の現場では遅れが顕著です。
  • 民間工事: 民間工事では発注者の理解・協力が得られにくく、工期設定が厳しいため、労働時間の上限規制の遵守が難しいとの意見が多数寄せられています。
  • 地方自治体(市町村レベル): 週休2日制工事の実施が「進んでいない」と回答した割合は、市町村レベルで83.0%に達しています。
もしあなたが地方自治体や民間発注者の支援を主に行う案件に配属された場合、国の直轄工事のような完全週休2日制の恩恵をすぐに受けられるとは限らない、という冷静な事実を知っておくべきでしょう。
Q:残業時間が増える「構造的な理由」は解消されているか?
発注者支援業務において、技術者が長時間労働を強いられる大きな理由の一つが、発注者側の対応の遅れや不備です。
【聞くべき質問例】
◇「突発的な残業が発生する場合、具体的な原因としてどのようなケースが多いですか?」
◇「発注者側との協議や回答の遅延を防ぐための社内的な対策や、発注者との連携ルールはありますか?」

残業につながる具体的なデメリットは下記の理由が主な原因です。
  • 協議・回答の遅延: 施工途中の協議や確認に関する発注者側の回答が遅れることが、長時間労働の主要な理由の一つとされています。
  • 工事終了後の拘束: 工事が早く終わったとしても、発注者側の変更手続きや検査が間に合わないために、技術者が工期終了まで現場に拘束されてしまうという事例も報告されています。
  • 設計図書の不備: 発注者側のマンパワー不足により、不備のある図面がそのまま発注され、結果として、受注者側の技術者がその対応に追われ、長時間労働を強いられています。
また、時間外労働の削減は業界全体の課題ではありますが、従業員の中には「残業や休日出勤により収入を増やしたい」という意欲を持つ人もいます。一律な労働時間規制は、こうした「稼ぎたい」労働者のモチベーション低下につながる可能性も指摘されています。
1日のサイクルやスケジュールを考える技術者の男性

質問②:業務内容と活かせる経験(業務内容編)

発注者支援業務は、書類作成や協議調整がメインとなりますが、業務の質は発注者側の意識や体制によって大きく左右されます。
施工管理経験者が発注者支援業務へ転職する際の適性に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。
Q:資料作成・調整業務の負担軽減は本当に進んでいるか?
国は「工事関係書類の標準様式の展開」や「工事書類スリム化のポイント」の周知など、書類作成業務の負担軽減策を打ち出しています。しかし、現場レベルではその徹底に課題が残っています。
【聞くべき質問例】
◇「書類限定検査(44種→10種)が適用されている案件はどの程度ありますか?」
◇「発注者とのやり取りにおいて、ICT(Web会議、電子決裁など)の活用率はどの程度ですか?紙でのやり取りが残っている慣行はありますか?」

国(国土交通省)全体では書類削減が進んでいる意見がある一方で、現場の監督員や検査官によって要求される書類の量が大きく変動するケースが報告されています。

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進められていますが、電子納品時でも紙の提出を求めるような旧態依然とした慣行が残っている場合もあり、発注者側がICT活用を前提とした業務プロセスを構築できているかどうかを確認することが重要です。
Q:設計変更など、本来の発注者業務を受注者へ転嫁されていないか?
発注者支援業務の最大のデメリットの一つは、発注者側のマンパワー不足を背景に、本来コンサルタントや発注者自身が行うべき業務が、支援者(つまりあなた)にしわ寄せとしてくる実態です。
【聞くべき質問例】
◇「入札後の段階で、設計図書の不備による大幅な設計変更が発生する頻度はどれくらいですか?」
◇「関係機関との協議資料の作成や、概略設計にとどまっていた部分の詳細設計など、本来の業務範囲外の作業が発生した場合の対応ルールはありますか?」

ヒアリング調査では、発注前の設計が概略設計に留まり、入札後に詳細設計や変更が必然となっている工事が多いことが指摘されています。

その結果、本来、発注者が行うべき設計変更や関係機関との協議資料の作成を、入札後の受注者に負わせているという実態があります。発注者支援業務に携わるあなたは、この「不備のある図面」に対応し、協議・調整の資料を作成する役割を担うことになるかもしれません。

もしあなたが現場経験者であれば、設計図書の不備を早期に発見し、適切な設計変更を提案する、といった形で経験が活きる可能性もありますが、未経験者の場合は、業務の難易度が想定以上に高くなるリスクがあることを認識しておくべきでしょう。
技術者が設計変更で協議資料を作成している画像

質問③:将来のキャリアパスと年収(キャリア・将来編)

発注者支援業務は、公共事業の根幹に携わるため、高い専門性が求められます。しかし、その専門性が正当に評価され、適正な報酬につながるかどうかは、業界全体の積算基準の課題と密接に関わっています。
発注者支援業務で求められる具体的な資格について詳細はこちらの記事をご覧ください。
Q:適正な報酬につながる「経費積算」は正しく反映されているか?
発注者側は、週休2日制やICT活用に伴うコスト増に対応すべく積算基準の見直しを進めていますが、現場実態との乖離が課題となっています。これは、企業の収益性、ひいては従業員の給与体系にも影響を与える可能性があります。
【聞くべき質問例】
◇「貴社では、週休2日制工事における経費補正(労務費割増など)について、実態に合わせた適正な積算が行われていると認識されていますか?」
◇「ICT施工の導入が進んでいますが、レンタル機器の損料など、実費と積算上の経費の乖離による負担は発生していませんか?」

発注者側は週休2日を前提とした経費補正を行っていますが、受注者側からは、現状の労務費5%割増程度では経費の増加分に「全然足りていない」との意見が出ています。

また、ICT施工の推進に伴い、ICT施工の経費が積算された経費よりも実費の方が高くなることが多いという問題もあります。こうした積算上の乖離は、企業が適正な利益を確保し、技術者に高い年収を提供するための障壁になりかねません。
Q:キャリアアップのための「スキル見える化」は進んでいるか?
発注者支援業務での経験は、公共事業の全体像を把握し、発注者側の視点を獲得できる点で貴重なスキルとなります。しかし、そのスキルを客観的に証明できる仕組みの利用状況を確認しておくことは重要です。
【聞くべき質問例】
◇「発注者支援業務の経験が、将来的に発注者側の専門職や、より高度なコンサルティング業務にどうつながっていくと考えられますか?」
◇「建設キャリアアップシステム(CCUS)の利用を推進していますか?(技能者の就業履歴やスキルをどのように評価・活用していますか?)」

発注者側の体制強化は喫緊の課題であり、設計図書の不備や書類要求の増加を引き起こしている発注者側の技術者の知識・経験不足を補う必要性が叫ばれています。つまり、発注者支援業務を通じて、発注者側の責務を理解し、高度な技術や知識を身につけた人材は、今後ますます市場価値が高まることが期待されます。

建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の就業履歴や事業者の社会保険加入状況の真正性を担保するだけでなく、発注者がCCUSを利用して施工体制台帳や技能者の週休2日の達成状況を確認できるよう、改修が進められています。CCUSの機能を活用した労働環境の「見える化」を徹底している企業であれば、あなたの働き方やスキルも適切に記録され、キャリアパスの担保につながると考えられます。
発注者支援業務への転職がキャリアや給与、スキルにつながるかを考える技術者の女性

まとめ:飛びつく前に“ホントに自分に合ってる?”を再確認しよう

発注者支援業務は、建設業の構造的な長時間労働を是正し、持続可能な産業へと変革するために不可欠な役割を担っています。国主導の改革により、書類の簡素化や週休2日制の浸透など、多くのメリットが生まれているのは紛れもない事実です。

しかし、現場の実態としては、発注者側の意識のバラつき、体制不足、設計変更の負担転嫁、そして積算基準と実費の乖離といった「発注者支援業務のデメリット」も依然として残っています。

あなたがこの道を選ぶかどうかを判断する前に、この発注者支援の実態を冷静に受け止めることが重要です。
発注者支援業務は、発注者側の意識改革や体制強化が進むことで、より魅力的で働きやすい環境が実現していくはずです。

あなたのキャリアは、ただ「なんとなく良さそう」で選ぶのではなく、「ホントに自分に合ってる?」と問いかけ、現場のリアルな情報を得て、慎重に判断することで、より充実したものになるでしょう。

もし、あなたがこの仕事のメリットとデメリットを理解した上で、建設業界の変革の一翼を担いたいと強く感じたなら、ぜひ転職サイトで具体的な求人情報を確認し、ここで紹介した3つの質問をぶつけてみてください。あなたの不安を解消してくれる企業との出会いが、きっと待っているはずです!

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